ハイまた結局次の日に2回観て来ちゃいました。
相変わらず深夜も盛況で、ああ、これで同時上映の『巨神兵なんたらかんたら』がなければ形としては最高なのになあ、と、毎回思った。
あ、ここからは思いっきりネタバレを含む感想なので、ネタバレなしの感想を読みたい方は昨日の記事をどうぞ。
<新宿の「バルト9」10Fにあったパネル。今回の物語の重さとは全然違うやんけ。
特に綾波は今回は●●●(詳しくは下参照)なんだし、アスカのこんな笑顔もない。
レイはいろんな事情でこのプラグスーツの方が正確だと思うが、
シンジのプラグスーツは今回のとはハッキリと違う。 なんじゃこりゃ。>
昨日の記事、「ネタバレなし編」の補足から行こうか。
1 展開上、ある程度はやむを得ないとしても、「そこでその感情が出てくるか?」というくらい、キャラクターが場面場面で出す感情が、一般的なリアリズムから言っても不自然すぎる。ムリヤリ過ぎる。
これは、「周りが、シンジが『目覚めて』から、こづき回しすぎだ」という意味ではなく、
1−1 シンジはなぜ、艦橋でアスカたちと出会ってからすぐに
「今まで何があったんですか!!」
と言わないのか、ということだ。そこで引っ張るからムリヤリ感満載になる。
艦橋で言わなくても、その後の、アスカも含む「面会」のところで、いくらでも
「今まで何があったんですか!!」
と聞けるだろうが。その「面会」で、シンジが目覚めるまで「14年」も経ったって、初めてわかるんだよ?このセリフを入れると、物語がうまく書けないという脚本なのだったら、昨日の記事で言ったに、あと1年2年公開を延ばしてもいいから、もう少し練り直すべきなのだ。
1−2 鈴原トウジの妹が自己紹介したときに、シンジはなぜ
「え?じゃあトウジは今どうしてるの?」
と聞かないのか。
これも、「脚本」的には、その答えとして「サードインパクト」の話に触れざるを得ず、そのせいで、せっかく「サードインパクト」を渚カヲルに語らせたい、という目論見が成立しないからだ。
あ、あとアレだね。新しいシャツが支給されたときに、内側に「鈴原トウジ」と書かれた刺繍を見つけて、シンジが
「ガーン!!!」
と来るシーンをどうしても作りたかったのだろう。安い演出だ。
それらの目論見を成立させたければ、上の質問が自然には出てこない設定、場面、セリフを作らなければならないのに、ただ「脚本の段取り」だけとしてこういう展開にするから、「ネタバレなし編」でも
「段取り芝居、段取りゼリフ」
と評したわけだ。まあアニメだから「段取り脚本」ということになるのだろうが、脚本の調整も「総監督」である庵野秀明がやっているのだから、声優の演技指導・脚本のチェック・全体の見せ方の調整全体で「段取り芝居」と定義していいだろう。
1−3 さらに、鈴原トウジの妹(鈴原サクラ)が、トウジが今どうなっているかについて全く語らないのに、やけにシンジに親しみ深い口調で話しかけたり、あらためて自己紹介をしたときに、「序」(すいません、「破」でした)で退院したときのような仕草までするのはなぜなのか。
それ以前の艦橋のシーンでは、爆発首輪に関して
「絶対に外しませんよ、それ。」
と、吐き捨てるようにサクラは言っている。「絶対に外れませんよ」ではなく、「絶対に外しませんよ」というセリフであることから、そこには、サクラの希望や意志も少しは入っている、ということだ。
さらに、シンジが綾波no.9に連れて行かれるときに、サクラが、「勝手もいいですけど、エヴァにだけは乗らんで下さいよ!ホンマ、堪忍してほしいわ」という捨てゼリフ(前半だけは「メッセージ」か)を吐く。
これでは、トウジの妹(鈴原サクラ)とシンジ、トウジの距離感が全くわからない、瞬間瞬間でコロコロ距離感が変わりすぎるせいだ。
1−4 さらに、鈴原サクラについては、
「絶対に外しませんよ、それ。」や、
「勝手もいいですけど、エヴァにだけは乗らんで下さいよ!ホンマ、堪忍してほしいわ」
などのように、、シンジに対するかなりネガティブな感情も持ちつつ、その一方で前述したように、鈴原トウジの親友だった(である?)ことについての肯定的な感情も持っているのなら、その揺れ動く心理の中で、言葉の端々にでも、「サードインパクト」とやらの説明、自分の思い、感想でも何でも、ひとかけらくらい、シンジに漏らすのがきわめて自然である。そのこと「だけ」について「全く何も話さない」ことが、人間関係やあの状況から言っても、不自然なことこの上ない。
だから、その心理的距離のぐちゃぐちゃ感って何なのよってこと。アンビバレントなものであるにせよ、もっともっと全体としての統一性が必要だということ。「兄がお世話になりました」と、「ホンマ堪忍してほしいわ」が数秒で両立できる人物設定なのか人物描写なのか脚本なのかわからんが、こういうところにムリヤリ感、段取り感を思いっきり感じてしまうのだ。
1−5 ミサトもリツコも、綾波no.9がいつ来るかわからない状況だと、すでにわかっているかのように綾波no.9に反応しているのだったら、その状況をあらかじめ、少しでも早く、正確にシンジに伝える必要があるのに、その前の「説明」のときは、ミサトはただ壁にもたれ腕を組み、リツコも、シンジに正対しないような姿勢で、必要最小限のことしか言わない。
「事実を語れば、そのショックで覚醒するかもしれない!」
と思っていたのだったら、なぜ爆発首輪をあらかじめつけてるんだよ。
しかも、綾波no.9と共にシンジが去ったときに、ミサトが思い切り爆発首輪装置のスイッチに指をかけてるやんけ。
ミサトサイドとしては、シンジのせいでサードインパクトが生じ、そのせいで世界がめちゃくちゃになったんだろ?
だから、シンジが初めて艦橋に連れてこられたときに、オペレーターたちがいかにも「イヤー」な目線でシンジを見たんだろ??このシーンも段取り感でいっぱい。イヤーなだけでなく、首輪爆弾をつけられるくらい「危険」なシンジが、その後艦橋の窓からアスカの2号機を見たり、ミサトに「ミサトさん!」とファーストネームで語りかけることを普通に放置できるのはなぜなの?(一瞬だけ誰かが手をグーにして強く握ったが、それだけである。)ミサトでなくても、リツコあたりが強制監禁か身柄拘束くらい命じるだろうに。
おっと、話が別の方向にそれた。元に戻そう。
爆発首輪をあらかじめつけられているのだったら、
「事実を語れば、そのショックで覚醒するかもしれない!」
などという甘っとろい「前提」など、ミサトサイドが置いているわけなかろうに、ということだ。
だから、各人物の、そのときの頭の中を想像すればするほど、なぜ早くシンジにサードインパクトのことを説明しなかったのかが説明できないということだ。各人物の、人間としてのリアリティが全く感じられない。ただ「記号」として「セリフ」を段取り通りに発音しているだけにしか見えない。昨日紹介した、福田和也による『アウトレイジビヨンド』評とそっくりになるのだ。
記号化された存在、セリフと言えば、アスカもおかしい。
1−6 「破」で、「アスカを殺すくらいなら僕が死ぬ方がいい!」とまで言って、アスカを攻撃するのを最後まで拒んだという意味で、アスカを必死で救おうとしたシンジの行為が、アスカにとっては「なかったこと」になってるのはなぜ?シンジがああいう抵抗をしなければ、今ごろアスカはとっくに死んでるんだよ?
それを、特にラスト近くで、「やっぱり私を助けてくれないのね」とは何なの??
その直前まで、本気で、シンジが乗っているエヴァ13号機を徹底的に破壊しようと=シンジを殺してもかまわないと思っているかのような戦いぶりと、全く整合性がない。アスカno.2がいれば、
「アンタ、何様?」
と言うであろうこと請け合いである。
アスカのエヴァ2号機改が突然電池切れ(笑)になったときに、シンジに殴り返されて、
「女に手を上げるなんて最低!」
と吐き捨てるのも、
・オイオイ、お前さんが本気でシンジを殺そうとしてるんちゃうんかい!
と突っこみたくなって仕方がなくなるのだ。
だから、昨日の「ネタバレなし編」で、「仁義なき戦い」のテーマソングを紹介したり、「そりゃままごとだろ」と言ったのだ。タマを取り合うときは、命がけなんじゃないのか?そこに
「女に手を上げるなんて最低!」
が入ることで、私としてはもうフニャフニャにならざるを得ない。頭の中が「????????」でいっぱいになる。
お、いかん。時間だ。とりあえず「Qネタバレあり編1」はここで切り上げておく。まだまだ言いたいことはありまっせ〜!!
追記:「アスカは、シンジたちの乗るエヴァの本体を止めようとしただけで、エントリープラグさえ無事ならシンジは大丈夫だとわかっているからだ」という予想反論に対して。←これもホントかどうかかなり怪しいが。実際に、「序」でも「破」でも、エヴァが腕をちぎられたり、いろいろ浴びせられた(笑)ときに、シンジもレイも、あれだけ苦しんだではないか。
答え:だったら、なぜ「破」でゲンドウはシンジに、アスカが使徒に取り込まれたときに、そのことを素早く伝えなかったのだ?そのことさえ伝えていたら、シンジはアスカのエントリープラグが壊れないように戦うはずで、あれだけ先の展開が堀江貴文並みに「想定内」(笑)な碇ゲンドウとしては、
「じゃあゲンドウは『破』でアスカを殺そうとしたのか?」
ということになる。
おかしいだろ。
「エヴァを傷つけるということは、エントリープラグ内の人間も傷つける」という設定が守られている限り、上のアスカvsシンジ(カヲルは腕を組んだまま)の戦いは、少なくともアスカサイドから見たら、
抵抗するならタマ取るで(#゚Д゚) ゴルァ!!
モードでなければありえないことだ。そして実際にシンジは「抵抗」をした。
だったら、アスカサイドとしては・・・「本気」にならざるを得ないだろう。