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アンフェア the end ネタバレなし編

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1年半近くも、記事を全くアップしていなくても、『アンフェア』のシーズンになると、もったいないほどのアクセス数をいただける。当ブログはなんとも幸せものである(感涙)。

 

特に、このレビュー記事で「沈黙」を破るつもりはさらさらなかったのだが(とにかく、仕事なりなんなりで忙しすぎるだけ)、昨日、2015年9月5日に『アンフェア the end』が劇場公開されたので、当ブログ主の義務として、封切日の昨日に、しっかりと観に行ってきた。もちろん、私自身のenjoymentのためでもあるが。相変わらず、ネタバレなしでのレビューが鼻血が出るほど難しいが、がんばって書いてみよう。これまた例によって、思いの丈を語り尽くすのは ネタバレあり編 でやる予定。しかし忙しすぎる・・・。

(ちなみに試写会には外れたw 珍しく空いている日で、意気込みをかなりアピールしたのだが。)

 

 

◆私が考えるこの映画の一番のキモ 

パンフレットには「今までで一番激しいアクションシーンを入れた」的なことが書いてあった。確かに篠原涼子(雪平夏見)や佐藤浩市(一条)らによるアクションはなかなか手に汗握る、がんばったシーンだとは思うが、これまでの『アンフェア』映画3作品の中では、一番「セリフ演劇(すまんね、演劇用語で)」に近かったと私は思う。なぜなら、

 

・映画冒頭の雪平の独白から始まる「状況設定」、

・この映画が映画らしいストーリーを持つためには、永山絢斗(津島)と佐藤浩市(一条)、特にこの二人のセリフが、どれだけ雪平を説得できるかにかかっていること、

そして、

・誰がいつ、どういう狙いでどういう行動を取るのが最も「トク」なのかを、観客が自分で頭を使ってそのつど考えなければならないこと(その結果として、「なんでこの人がここで×××になんねん!!」というところもてんこ盛りだと気づくのだが)

 

この3つの事情から、今までの3作の中では最も「セリフによる語り」が映画にとって重要な役割を果たしているからだ。

 

その角度から言えば、今まで拝見したレビューでは

 

・検察官(しかもかなり偉いらしい。「最高検察庁監察指導部検察官」だってよ。こんなに若くても、そんなポジションにつけるのかね?)として出ていたEXILE(詳細不明)のAKIRA(武部)の演技が超ウンコ!

 

という意見は、やや的外れであるように思う。いや私はEXILE系は特にキライで、授業などでも「あのゴキブリみたいな連中」って言っているくらいなので、EXILEに対する印象は「最悪」に近いのだが、AKIRAのあの演技自体は、いわゆる「棒」「大根」で何ら問題はない(詳しくはネタバレあり編で)。それより、「あの若さでそのポジションって何?ありうるの?」という「設定」の方がよほど気持ち悪い。

 

そうではなく、この映画の一番ダメな点は、

 

・永山絢斗の大根演技

 

である。

公式HPより> 

 

あらこの人、『藁の楯』のあの若刑事役の人か。演じ方はかなり違っていたので、「根本的に下手な役者」ではないと思う。『藁の楯』での永山はひどかったが。

 <『藁の楯』での永山絢斗>

 

キャスティング的には、わざと瑛太(ドラマシリーズの最後で雪平に殺されることになった安藤)の実の弟である永山絢斗を使うことで、雪平の「無意識」の領域に、瑛太の面影をすり込むというシカケを入れることで、雪平がこの津島にグッと説得されやすくなる、という狙いは痛いほどよくわかるし、篠原もそのことをよく理解して演技していた。しかし、肝心の永山絢斗が、なぜ自分がこういう行動を取っているのかという説明をしている、きわめて重要な瞬間において、自分のセリフの終わりでうまく「間」と「自分の動き」を止められていない。特に取り調べのシーンで。歌舞伎のように「キメ」を残せということではなく、自分自身が確信を持って語っているセリフは、そのセリフの後で、

「どうです?雪平さん!ボクの発言をどう思うんですか!」

と、相手に迫る態度が、これまた「発言者の無意識」として現れてこなければならない。その演技がうまくできていなかった。0点ではないが、

・その瞬間でその「揺れ」「ブレ」はないやろ~

という箇所が10個以上もあったので、30点くらいである。津島がそうだと、それに一時的でも説得されてしまう雪平の動きが、連動して薄っぺらくなるんやて!!

 

私が考えるポイントはここに尽きる。案の定というかなんというか、ラストシーンではああなるわけだから、この「筋(プロット)」を、何としてでも演技として成立させなければ、そりゃこの映画自体の面白さは半減どころではなく下がる。佐藤嗣麻子監督は、映像づくりや、見せ場づくりとしての映画製作技術は年を追うごとに高まっているとは思うが、肝心の俳優に対するディレクションのキモを押さえ切れていない。この点がきわめて残念だった。

 

ここを重く見て、私のこの映画の評価は 70/100点 である。前回の the answer に75点をつけたので、それよりは低い。それでも7割の点数を、自信を持ってつけているのは、大人の事情も含めて、清濁さまざまなことがあったにせよ、10年がかりで、一つのストーリーを「完結」というところに持っていくことができたからである。また、各俳優の演技も決して悪くはない。そのような、

「この『10年もの』のドラマ+映画を、『大団円』としてしっかりfinishしたい!」

という、キャストとスタッフ、そして関係者全ての方の思いに対して、心から賞賛したいからである。その思いは、7割は結実している。これを高いとみるか、低いとみるかが人によりけり、ということになろう。

 

 

◆タイトル通り、『アンフェア』シリーズ全体に対する the answer は出たのか。

パンフレットを映画を観る前に読むことは絶対にやめたほうがいいが、ギリギリ大丈夫だろう、と思う範囲で言うと、パンフレットで、佐藤監督が

「the answerを『出した』」

という言い方をしていた(はず)なのが象徴的だった。その通りである。「出した」のであって、「出た、明らかになった」のではない。

 

 

しかも軽い。

 

 

あうー、残念。。。(ストーリーとして)

 

しかしこれも、「the answer ネタバレあり編」で私がすでに以下のように書いたとおりなので、これで大きく落胆することはない。

 

(自己引用ここから)

1 「誰が最もアンフェアか」という問いに対するanswerは出たのか

出ていない。というか、そもそも、この物語は「the movie」を終わった時点で、こういう問いを越えたエンターテイメントとしてどれだけ客を引っ張れるかという次元での戦いになっている。なぜなら、「the movie」を終わった時点で、

・安藤(瑛太)

・安本(志賀廣太郎)

・蓮見(濱田マリ)

・斉木(江口洋介)

・戸田(成宮寛貴)

・後藤(椎名桔平)

らがすでに死んでいるからだ。キャリア組も含め、これだけ警察関係者が死んでいる時点で、これ以上雪平を中心に、どんな「警察内に巨悪があるストーリー」を作ればリアリティが出るのか?という問いが出てくるのは当然だろう。雪平をめぐる捜査集団は、この時点でもう「すきっ歯(って今言わないのかな?)状態」なのだから、元捜査一課内に裏切り者がいるとすれば、

・小久保(阿部サダヲ)

・山路(寺島進)

・三上(加藤雅也)

の3人の中にしかいないのである。

(自己引用ここまで)

 

この映画では、特に「誰が何の目的で雪平の父を殺したのか?」に対する the answer を、制作者側が出そうとしたのだが、上の記述で特に問題がないくらい、 the end で示された「答」は軽かった。むろん、上の3人の誰かが殺した、ということまでは言っていないので念のため。 

 

 

◆我らがサダヲ(小久保)はこの映画ではどうだったのか

 

 

当ブログのアンフェア関連記事を細く長くお読みいただいている方々にはおわかりだと思うが、この写真からして違うんだよな~。『アンフェア the answer』での小久保一課長の、「雪平との『戦友』ぶり」の真骨頂が、『アンフェア the end』では、チャーハンについてる紅ショウガぐらいになってしまった。 

 

せつない・・・(`;ω;´)

 

これも、ネタバレあり編で発散するつもりだが、小久保一課長のラストの一個前のシーンでのセリフが全然ちゃうやん!ということだ。

(ちょいネタバレ)小久保「あとでしっかり聞かせてもらいますからね!」

 

じゃねえだろ小久保一課長????(脚本に対する怒り)

そもそも、その状況で雪平に敬語を使うキャラじゃねえだろ小久保一課長は!!!!

 

これ以上は豪快なネタバレをしなければ書けないので、とりあえずはここまででガマンする。

 

 

◆篠原涼子のたっての願いで、急遽、雪平のシャワーシーンを入れる

これができるのなら、小久保の最後のセリフも阿部サダヲが直訴すればいくらでも変えられたと思うが、私の感想は、

・・・進撃の巨人か?(もちろん「巨人」として)

である。


雪平は、例の刑事のカッコウをしているときが一番エロい。雪平の色気担当部分は、それだけで十分すぎるのだがなあ。

 

 

◆その他 

吉田鋼太郎(東京地検特捜部長)と向井地美音(雪平の娘、美央)は本編ではほとんど出てこない。役割的にも微妙である。この二人に期待して観ると、裏切られるだろう。

エンドロールの曲はイマイチだが、今までのキャラを、静止画で、あんなふうにちょっとした編集をして出したのが、心憎い。ああいうのでいいから、安藤や佐藤をもっと見せてほしかった。佐藤一夫(香川照之)の笑顔に感無量。

 

 

というところで、とりあえずアップしておこう。あ、

 

気がついたら、「日本での女性ハードボイルド刑事ドラマ+映画」として、日本のエンターテイメント史に残る作品になっちゃったね。その意味ではとてもオススメである。ただ、この『the end』だけではなく、ドラマも合わせた全体でだけどね。

 

 


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