昨日の話ともつながるが、いよいよ採決という時になって初めて
「聞いていない!政治家は自分のことしか考えていない!」
などという「衆愚」がワラワラ出てくる(笑)。衆愚による次の怒りのピークは、おそらく2014年春、消費税がまず8%になるときであろう。
例えば今晩のNHKニュース7から。
札幌市のこの人が「衆愚」かどうかはわからないが、少なくとも、
1 「なぜ消費税を上げなければならないと政府が言っているのか」を理解し、
2 その論理がおかしければ、理由を挙げておかしいと説明すること
ができていなければ、政治家や官僚たちから見れば、「何も考えていない衆愚」と見なされるであろうし、私もそう見る。
こう書くと、またアホが、「白河は消費税に賛成なのか!」などと頭に青筋を浮かべて怒れば、論理も何も関係なく「反論」できたつもりになるのだろうが、それこそ「衆愚」である。そういうレベルのバカはこのブログを読むなよ。ツイッターで傷口ナメナメトークして喜んでいればいい。
怒っていさえすればロジックがいらないと思っている最悪のバカに向けては、以前こういう記事を書いているので読んでおきなよバーカ。
2chで絡んできた放射脳クンは、「怒り」が「バカであること」の免罪符になると思っているらしい(笑)(2012.05.11)
さて。「論理」と「説明」の重要性を理解している人間だけに向けてここからの文章を書くが、今日一番重要だった映像は、民主党が何人造反したかとか、小沢が何を言ったとかでは全然なく、これであろう。
今日午前中の衆議院特別委員会での野田総理
「改革をやり遂げなければと思う人が、腹をくくり賛成しようとしている」
この野田の発言に、今回の消費税騒動の本質が余すところなく現れている。すなわち、
「財政改革のためには、消費税増税が必要である。」
というロジック(論理)である。これが野田と財務省と民主党執行部らによる「増税のリビドー」とも言うべき原動力、エンジンとなっていた。(参議院での採決も残っているので、ここは現在形で書かなければならないかも知れないが、そんなところはどうでもいい。)
で、私が国会論戦を見ていた限りでは、自民党や公明党、果ては共産党や社民党、みんなの党、その他弱小政党が束になって
「景気を回復させることが先で、景気が回復すれば、税収は自然に増える」
と、このロジックそのものに反論していたにもかかわらず、この野田と岡田と安住は、言い方はそれぞれ違っていても、主旨としては
「でも景気が回復しなかったらどうするの!」
と反論し、消費税増税を強行したのである。「衆愚」から卒業するためには、こういう「国会論戦」をネットでも録画でもいいからざっとチェックしておくことである。例えば衆参両議院の財政金融委員会のビデオライブラリーの中から、自分が見たいと思った野党議員のツッコミをざっと見るだけでも、上のようなやりとりはそれこそ掃いて捨てるほど出てくる。そういう「作業」を、やれ時間がないとか、やれめんどくさいとか、果ては
「それをちゃんとするのが国会議員でしょ?」
などと、自分が何も理解していないことを「逆ギレ」でごまかそうとするから私がバカ呼ばわりするのである(笑)。あのね、「代議制民主主義」という政治制度では、
国民自身が、代表者である国会議員の言動を「チェック」し、次の選挙に生かさなければ、いつまで経っても「代議制民主主義」は機能しない
のだよ。覚えておけよ情報弱者のバカタレ君よ。
で話を元に戻すが、野田と岡田と安住らが、
「でも景気が回復しなかったらどうするの!」
という主旨で野党に反論し続けてきたということは、
「景気が回復しなくても、消費税増税をしておきさえすれば、税収だけは確保できますよ」
という「前提」があって初めて可能になる発言である、ということを「論理的」に「理解」できなければならない、ということだ。
当たり前である。「でも景気が回復しなかったらどうするの!」と反論したということは、
「景気が回復しなければ、消費税を上げないと税収が増えない」と思っているに他ならないということであり、それはすなわち、
「景気が回復しなくても、税収が増えているとするならば、それは消費税を上げているときだ」ということになる(対偶を取ったわけだ)。あ、「対偶」って高1レベルの数学だけど、高卒以上のヒトなら覚えているよね?忘れてるならぐぐっとけ。
・・・しかし私は優しい(笑)から、ベン図を作ってしまった。こういう図式である。
<民主党執行部らが考えている図式>
※この図を見ると、消費税を上げても必ずしも税収が上がらないかも知れないという可能性すらあるからひどいものだ(笑)。
だから、街角でインタビューされたなら、こう答えればいい。
「現政権は消費税を上げないと税収が増えないと思っていることが最大のまちがいで、
まず景気を浮揚させるために一時的に財政支出を増やさなければ、ただでさえデフレなのだから、ますます金詰まりを起こして
日本はえらいことになりますよ!」と。
しかし悲しいかな、私が見た限り、こういうロジカルな「街の声」は一つもなかった。だからやれアホだ、やれ衆愚だと言うのである。
というわけで、財務省HPから、税収の推移のグラフを。
あれだけネトサヨ(笑)が必死に叩いていた、「小泉竹中改革」の時期である平成13年以降は、平成14,15年で一度底を打ち、平成19年まで堅調に税収が伸びているのだ。その一方で、公債発行額も着実に減らしてきた。まさに、「小泉竹中改革」が功を奏していた時期であった。小泉竹中路線を必死に叩いてきたネトサヨ(笑)ご一行様は、まずこの現実を現実として受け止めることから人生を再スタートさせるべきだ。消費税増税に反対ならね(笑)。
で、この税収回復の源は法人税である。財務省はご丁寧に、税の種類別の税収推移グラフまで作ってくれている(笑)。
平成14年から平成18年まで、一番税収の伸びを示しているのは黄色のグラフ、すなわち法人税である。
しかし財務省は上のグラフの中で青色、すなわち消費税の税収が、景気に左右されないことを必死に閲覧者に刷り込もうとしている。
「所得税、法人税の税収は景気動向に左右されやすい一方で、消費税の税収は10兆円前後で推移しており、比較的安定しています。」
の部分だ。
うん。そうだよね。だから、それって、
「デフレがいくら進もうとも、国民がどれだけ生活が苦しくなろうとも、『税収』だけが変わらないのが消費税です」
って言ってるのと同じでしょ、ということだ。だから財務省が必死に消費税増税を訴え、野田と岡田と安住を抱き込み、「今日の1枚」として挙げた、この画像になるわけだ。
・・・「腹をくくっている」のは、「改革をやり遂げなければと思っている人」ではなく、「日本がどうなろうとも、税収だけは維持できればいいと思っている人」でしょ、ということだ。
まさに、みんなの党の江田憲司などが繰り返し言ってきた、「財務省に洗脳されている野田総理」そのまんまである。野田は国会で執拗にそれを否定したが、上のグラフを見れば、日本の景気を良くしようという成長戦略について、国会で政府が全く語らない理由は、消費税を上げさえすればとりあえず財政が何とかなると思っている、としか判断のしようがないのだ。そしてそのことによって一番利益を得るのが財務官僚で、どれだけ円高になろうとも、「日本の財政を『健全化』させた功労者」として世界から「認定」してもらい、今度はIMFや世界の格付け会社に「天下り」できることが彼らにとって至上の幸福なのである。「カネ」と「名誉」の両方を手にすることができるのだから。しかも彼らは少なくとも「天下り」をする前は公務員である。日本がどうなろうとも、仮に賃下げとなろうとも、その波が来るのは「一番最後」になる(なぜなら、民間の給与水準が変化して初めて、人事院勧告による給与水準の提案も変化するからである)。
※ちなみに、洗脳されている人間が、「ハイ、私は洗脳されています」などと認めるわけはなかろう。そのくらいオウム事件で学べよ野田も江田も。
これだけ「利益」を享受できるのが財務官僚である以上、陰謀論を基本的に認めない私も、これだけ「利益」を集中的に享受できる集団がある以上、この連中が裏で糸を引いていると言わざるを得ない。
もっと思考実験すればこうである。仮に財務省主税局の中に、税金だけもらえればいいとは考えておらず、まずは日本の景気回復を!と思っている輩がいるとすれば、そもそも上のようなホームページにはならないだろ?ということだ。しつこいがもう一回貼る(笑)。
私がそういう「心ある財務官僚」だとしたら、上のコメントはこう書き直す。
「確かに消費税は景気に左右されにくい、比較的安定した税目ですが、今はデフレの時期であり、デフレの時期に税収が変わらないということは、実質的に増税したのと同じことになります。」
私より頭がいいはずの財務官僚が、なぜ上のようなコメントをできないのかねえ?(苦笑)。実に不思議でならない。
というわけで、「せめてデフレを脱却してから消費増税を」が、どんだけ「正論」なのかを蕩々と語ってきたが、読者は理解できただろうか。理解できないのなら、「日々の生活」とやらに脳細胞を殺されてしまっている証拠だ。ヒトとして、もう少し勉強すべきであろう。
そしてそういうバカからは、選挙権を剥奪してもかまわないとさえ私は思っている。少しは投票できないことの苦しみを味わえということだ。