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庭山由紀議員に対する懲罰動議について 考察編

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懲罰動議全文は前の記事に掲載したので、こちらの記事で考察していく。また、以前庭山市議について私が書いた記事はこちら

 

1 なぜこんなに長いのか

読む側としては大変だが、庭山に対して提起されている動議は、懲罰の中でも最も重い「除名」である。したがって、動議をおこす側は、「これだけの不適格事由がある」ということを質だけでなく、量でも示すために、いくつかの具体的な「声」を引用することも含めて、これだけの長文(約1万字)を作ったのだろうと推測する。まあ「セオリー通りの攻め手だな」という印象をうける。

 

2 では、質としてはどうか

適宜前記事を参照しながら、マルチウィンドウでご覧いただければありがたい。前記事の動議全文に対してコメントを入れていく。

>平成24年5月25日に庭山由紀議員が「献血の車が止まっているけど、放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」と短文投稿型情報サービス(以下twitter)に書き込みをしたことに端を発した一連の情報発信について、

>(中略)

>この発信は、献血に対する安全性の確認もせず、ただいたずらに市民・国民を混乱させ不安を煽るものであり、これらはまさに、原子力発電所事故由来放射性物質飛散に苦しむ地域の人たちに対する人権侵害とも思われる差別発言である。

赤字の部分が最重要。当ブログでも以前書いたように、献血された血は、一般的には放射線照射によって「不活性化」される。したがって、群馬県桐生市が、仮に庭山が確信する「放射能汚染地域」であったとしても、放射能汚染地域に住む人の血が、そうでない人の血と比べて汚れているなどという「科学的現実」はどこにも存在しない。しかし庭山は、上のようなツイートすることにより、群馬県桐生市市議会議員という公的な立場に伴う影響力を考えずに、ただ

・自分が都合がいいときは「私は一般人」、

・また別の都合がいいときには「私は市議会議員」

と、自己の位置づけを無根拠に入れ替えている。それで庭山本人は「理」の通った主張をしているつもりであっても、他者には全く「理」が通っていない発言であり、そういう「理」が通っていない発言を、ツイッターとは言え、群馬県桐生市議会議員という、法律的にも明確な「公人」が行っていることが最大の問題である。

 

しかし、先に引用した動議では、その部分の説明が足りないと感じている。

>また桐生市は放射能汚染地域ではなく、放射能汚染状況重点調査地域であり、このような誤った発信・発言により一般市民は、大きな誤解と混乱を招き著しく誇りを汚され、深く傷ついている。

このように、問題を「誇り」という、極めて主観的なものにすると、庭山(とその支持者たち)から見ると

「それはあんたたちが勝手に持ってる『誇り』でしょ?それをあたしが尊重する筋合いはどこにもないわ」

と開き直るだけで、どこにもコミュニケーションが成立しない、残念な動議になってしまう。そして実際に、そうなってしまっているのだ。

 

>平成23年12月12日にtwitterに「毒物作る農家の苦労なんて理解できません。」との書き込みについて、平成24年5月31日、新田みどり農業協同組合 代表理事組合長 橋場正和氏ほか3団体の連名にて、「庭山由紀桐生市議会議員に対する辞職を求める要請書」が提出された。

これも、問題点は、桐生市議会議員という「公人」が、基準値をクリアしている農作物を「毒物」と「表現」していることで、

「桐生市議でさえ『毒物』という言葉を使っているのだから、桐生市の農作物は、基準値をクリアしていても、『本当』は、『有毒』なんじゃないの?」

という、「風評被害」を産みかねないということがその本質である。しかしこの動議では、その点についてのツッコミが甘い。

 

>こうした状況の中で、桐生市の庭山由紀市議会議員は、昨年12月よりインターネット上等で根拠となるデータ等を示さぬまま、一方的に生産者に対し、「毒物作る農家の苦労なんて理解できません」等と発言したが、このような無責任な発言は、国、県が示したルールを遵守し、誠実に生産に取り組む農業経営者を誹謗中傷するものである。

>また、このような発言は、消費者の不安をあおり、県産農畜産物への信頼を損なわせ、風評被害による農業の損害を拡大させる恐れがある。

 

ここの部分でも、「市議会議員という公人が」という指摘が全くなされていない。その意味で、上の部分も弱いと感じざるを得ないのだ。

 

>こうした状況の中で、桐生市の庭山由紀市議会議員は、今年1月22日(原文通り)からインターネット上等で根拠となるデータ等を示さぬまま、一方的に生産者や消費者の不安をあおる「高濃度に汚染された黒保根で収穫された野菜各種が販売されている」と、多大なる不安と生産意欲を損なう精神的苦悩を与える発信をした。このような無責任な発言は、国、県が示したルールを遵守し、誠実に生産に取り組む農業経営者を誹謗中傷するものである。

 

この部分も、「誹謗中傷が問題」と読める書き方をしているが、そうではなく、「公人」が、「風評被害」を産みかねない言動をしていることが問題なのだ。

 

>以上、度重なる虚偽の発信・発言内容は誠に遺憾であり、このことは桐生市議会議員としてあるまじき行為である。

 

この部分も、「遺憾」という言葉を使っているがゆえに、「俺たちは腹が立っているんだ!」という、主観的な感情を前面に出した指摘しかできていない。「桐生市議会議員としてあるまじき行為」であると明確に断罪したければ、市議会議員という「公人」が、どういう発言をしたことで、どのような「実害」を産みかねないか、ということを、もっと具体的に表現しなければならない。そうでなければ、いくら発議者が「遺憾だ!」「遺憾だ!」と繰り返しても、

「そりゃあんたたちから見たら遺憾でしょうよ」

と思われておしまいなのだ。ここも、コミュニケーションが成立していないなと感じる点である。

 

 

原発や放射線をめぐる言説に特徴的なことは、 あらかじめ先入観として、

・この公式発表は正しく、

・この公式発表は、「実は真実を隠すためのウソだ」

という「選別装置」を自分の頭に置いておくことで、「ウソ」の機関が発する発表は、公式だろうが非公式だろうが、トコトンウソだと始めから思える、という点である。いみじくも池田信夫が指摘したように、

・政府が設定する「放射線量基準」は絶対に正しく(むしろ厳しければ厳しいほど「正しい」と彼らは勝手に思うように思考回路が「あらかじめ」作られている)、

・それと同じ政府が発表している、「放射線測定量」は、絶対にまちがっており、「本当」は「もっと高いはずだ」と「あらかじめ」思うようにできている。

というダブルスタンダードが何の矛盾も感じずに存在できる点である。その証拠に、この庭山市議の懲罰動議に関するネット記事に寄せられている「一般人」からのコメントにも、以下のようなものが散見される。

 

ある意味正論 2012/6/12 19:44
汚染者の血を輸血されたせいで放射能汚染されたら堪らんわなぁ・・・って思う人が大勢いても何ら不思議じゃない。
自分に害が及ばない範囲で可哀そうがってるだけなんだし。

 

正論です。 2012/6/12 21:22
庭山市議の文調はともかく、問題提起としては非常に理解できる。
おそらく市議であるから本人がセーブしてる部分があると思うが、市議を辞めさせられたら
ものすっごい情報公開、今以上の問題提起をしてくれると思う。
それが見たいという人は、庭山市議を辞任させることを支持すればいいと思う。
おそらく、こういう人は口や手が動かなくなっても、様々な形で活動を起こす人。

 

言えてるよ 2012/6/12 22:03
言葉は乱暴だけど正論だ。桐生市民も不安に思っているのではないか、実は。
農産物からセシウム出でいるし。
ぜひ、健康診断を。

 

庭山に実際に投票した奴 2012/6/12 22:17
です。
桐生市市民です、2児の母です。
「クソ教育委員会」私も思いましたよ。
http://niwayamayuki.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-e9f9.html
発言だけが注目されてますが、
彼女は議員としての活動、考えがブログから見えますし、
信用の出来る 議員さんだと思っています。
この記事を書いた記者さんは、ちゃんと 庭山議員のブログをよんで、他の議員さんたちのブログをよんで 桐生の現状をしって 記事にしたのだろうか?
他の議員さんのブログとかツイートのまとめだけだったり、自分の考えが見えないので、信用できません。

 

禿鷹 2012/6/12 22:44
この市議の言ってることは正論じゃないか?
ただ言い回しが過激なだけだろ、辞めさせることはないと思うけど・・・

 

勇気ある由紀かも知れぬ 2012/6/12 23:29
主張が異常か若しくは表現が過激かは現場の有り様をつぶさに見詰めないと分からないが、その意図する気持ちは真っ当な気がする。実際には糞ったれみたいな委員会であったり、バ〜カみたいな批判だったりしたのかも知れない。その物差しは議員自身の才覚であり、もしかしたら公務に対する強烈な服務責任を有するからではないか。

でなくば、まるで四面楚歌を思わせる状況を受け入れられる筈がない。議員にも家族や親類知人は沢山居るだろうし、先ずはその方々の力添えは一番の支えであろう。仮にもその拠り所に不協和音があるなら、それほどまでの主義主張は慎んだ筈。

日本全体に隠蔽体質に澱んだ空気が有る、福島沖を中心とした広範な原発被害はどれほどのものなのか。単に漁業に携わる多くの人々が困るからといって、然らば全国民が共に墓場に向かって良いものなのか。

誰もが口を閉ざす中に、その口を開こうとする人間が居ることを再考すべきである。その根拠は妥当か、正しいあり方か、間違っているのはどっちなのだと。

 

天晴れ、実に男らしい 2012/6/13 00:14
下品で露骨な物言いだが、言っていることはすべて正論。農家の苦労がどうのとか屁理屈を並べる人間は犠牲者が出ても同じことが言えるのだろうか。頬かむりするか因果関係がどうのと言い逃れするか、どちらかであろう。庭山議員の潔さの爪の垢でも煎じて飲めといいたい。氏を辞めさせようと画策している輩の親の顔が見たいものだ。

 

(ここまで)

 

一番下を除き、6/12に寄せられたコメント18個のうち、実に6個が庭山を支持するコメントである。その割合1/3。そこにたとえいわゆる「工作員」が混じっているとしても、無視できないコメント数である。なるほど、これなら、大選挙区制である市議会議員選挙で庭山を当選させないことは難しいのだろうな、とも感じる。

 

しかし、当選させないことが難しいということが、一度当選した議員を簡単に除名できていいという根拠にならないのも当然のことで、であるならばこそ、この懲罰動議を提起した議員たちは、もっともっとロジック面を詰めて、動議を仕上げるべきだったと私は考える。朝日さんのニュースでは、この動議を上げた議員たちは、「法律の専門家」に相談したとあったが、その相談に乗った「法律の専門家」が、この程度の文章で、選挙というプロセスで認められた議員という地位を、懲罰動議で「除名」できると思っているのであれば、「法律の専門家」の名折れである、と言わざるを得ない。なぜなら、ロジック面がきわめて弱いからだ。

これだけ庭山を「支持」するコメントが出てきている、という状況に鑑みても、彼らをも説得できる(ような、「実害」を明確にした)文章で、懲罰動議を提起しなければ、逆に庭山を現代のジャンヌ・ダルクにさせるだけである。

という問題意識が、今の桐生市議には弱すぎる、と言わざるを得ない(しつこくて恐縮だが、本当はこんなことは言いたくないのだ)。

 

 

桐生・庭山市議、失職の見通し(朝日さん 2012年06月12日)

 ツイッターでの「つぶやき」を発端に、桐生市の庭山由紀市議(43)が失職する見通しとなった。荒木恵司議長に10日提出された除名の懲罰動議に署名した市議は17人。可決に必要な16人を超えている。ネット空間での発信内容をめぐる問題が、有権者が選んだ議員の資格を奪う究極の懲罰へと進む、異例の展開だ。

 10日の動議提出後、庭山氏は、取材を申し込んだ報道各社の問いかけに、何も答えなかった。

 庭山氏は5月25日、桐生市が放射能汚染地域という自らの認識に基づき、市役所前の献血車の画像とともに「放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」とツイッターに投稿。その前にもツイッターで、市内の農作物が放射能に汚染されていると主張して「毒物」と表現し、農協組合長を名指しで「犯罪者」と呼ぶなどしていた。

 全国から700件以上集まった批判には、議会に対応を求めるものもあった。県農業協同組合中央会など農協4団体や市区長会連絡協議会など計9団体と6社から庭山氏の辞職を求める要望書なども提出された。

 しかし、ツイッターでの発信など、議会外での言動は通常、地方自治法などの規定で懲罰の対象外だ。動議に名を連ねた市議たちは当初、問責決議案の提出を検討し、議会運営委員会への出席を求めた。

 2日間の欠席後、8日に議運委に出席した庭山氏は、発信内容について謝罪や訂正はせず、改めて農作物を「毒物」と発言。これを受け、問責決議案を提出していた佐藤光好市議が「より重大な決議に替えたい」と取り下げ、懲罰動議提出の動きが加速した。

 市議会は15日の本会議で懲罰特別委員会の設置を決める。委員会の結論を受け、早ければ20日に本会議を開いて懲罰動議を採決する。可決されれば、庭山氏は同日付で市議の資格を失う。県によると、県内では過去20年以上、議員の除名はないという。

 多数派の横暴を防ぐため、地方自治法は、定数の3分の2以上の出席と、出席者の4分の3以上の同意を除名成立の要件に規定。本人は採決に加わらず、定数22の桐生市議会では16人以上で可決する。

 一方、除名された議員は知事に取り消しの審決を求められ、仮処分申請や訴訟で除名の有効性を争うこともできる。裁判で除名が無効とされた場合、個々の市議が訴訟費用を負担するなど、除名した側も一定のリスクを負う。ある市議は「議運での庭山市議の答弁について、法律の専門家に相談したうえで動議の提出に踏み切った」と話す。

 総務省によると、2008年に福岡県糸田町、佐賀県上峰町であった除名は、いずれも知事の審決で取り消された。一方、日の丸掲揚に反対して議長席を占拠し、02年に除名された横浜市議2人は高裁まで争ったが、3年後の05年に除名が確定した。09年に長崎県平戸市、10年に鹿児島県阿久根市でも除名の例がある。(大道裕宣)

 

 

この「法律の専門家」が、弁護士だとしても、「レベルが低い弁護士だな」と言わざるを得ない。ましてやこの「法律の専門家」が、弁護士ではなく、検事や法律学の大学教員だとしたら、なおさらこの動議の文章はひどい(=レベルが低い)、と言わざるを得ない。

 

 

というわけで、「結果として庭山を除名できれば理由や筋道は何でもいい」という立場に私は立っていないという前提で、この文章を厳しく論評した。読者の中で、「結果として庭山を除名できれば理由や筋道は何でもいい」という立場に立つものがいれば、それじゃあ上の「庭山支持のコメントを書き込んだ連中に対する反論にはなっていないよ」と言っておこう。

 

 


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