で、今日本当に書きたかったのはこちらの記事。ぶぶさんから教えていただいた「附則第18条」に関する考察である。一見さんのために、この前にまじめ(笑)に書いた記事はこちら。
まず、いわゆる「消費税増税法案」は、正式名称は、
「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」
とのこと。ご丁寧に、財務省HPに置いてある。時代は進んだものだねえ。
って、政府提出の法律案と言うより、財務省提出の法律案、ということなのかね?確か法案提出は、小沢一郎が民主党の幹事長だった2009年秋に、民主党の幹事長だけが法律案を出す、という形に「一本化」したんじゃなかったんだっけ?まあいいわ。
で、「附則第18条」だが、これ。このページから。PDFはこちら。
7.附則
○消費税率の引上げに当たっての措置(附則第18条)
消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。(ここまで)
で、次に、この「政府提出法案」に関して、民主党、自民党、公明党の3党が「合意事項」として文書にしたのがこちら(民主党HPより、一番下の「税関係協議結果」をクリック)。
○ 附則第18条について
・以下の事項を確認する。
(1) 第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2) 消費税率(国・地方)の引上げの実施は、その時の政権が判断すること。
・消費税率の引上げにあたっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する。
(ここまで)
で、この文章を読み、極東ブログなどでは
「増税翼賛会だ〜〜」などと嘆いている。以下引用する。
さて、消費税率の引上げにあたっての措置という「附則第18条」と今回の合意文書の対応部分はどのように理解したらよいのだろうか。
まず明白なのは、法案の「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」は合意文書で「政策努力の目標」となったことだ。つまり、どうでもよくなった。「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」は無効になってしまった。消費税増税よりひどい話である。率直にいって、この時点で日本のデフレは終わることはないということが、民主党・自民党・公明党で合意されたのである。
次に、消費税増税時期は「その時の政権が判断する」ということで、いかにも民主党後の政権が受け持つかのようだが、これはようするに、民主党・自民党・公明党がどのような組み合わせで政権を取っても、その政権がガチで消費税を上げますよという話である。増税翼賛会宣言であった。
この増税翼賛会はどのような日本を目指すのかというと、「財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」というのだが、つまり、消費税増税で財政にゆとりができたら、その分を成長戦略や社会保障に回すというのだ。それも「わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ」というのは、「デフレだったらやめます」というわけでもない。
現実的に見れば、「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」の放棄を三党で合意した時点で日本の未来のデフレは確定になり、そのなかでいくら消費税を上げても財政のゆとりなんか生まれるはずもない。日本はじわじわと地獄図へと変わっていくというのがこの三党、民主党・自民党・公明党の合意の描く未来であった。
冷静に政治を見つめ直してもショボーンな日本であったとさ。(ここまで)
ふむ。こういう「分析」が、100件以上もツイートでお話送りゲームされているような「著名なブログ」なわけね。さすが勉強になるわ(笑)。
で、こういう「分析」を鵜呑みにしてお話送りゲームに参加しているのもやっぱり「衆愚」に過ぎないよな、と言わざるを得ないというのが、悲しいかな結論である。
なぜなら、2009年の政権掌握以降、デフレ経済を全く止められなかっただけでなく、止めようとすらしなかったのは民主党だけだからである。昨日挙げたグラフでも明らかなように、「小泉・竹中路線」によって税収は上がり、公債発行額は減った。つまり、財務省主税局がしゃしゃり出てくる「スペース」を狭めたのは、当時の自公政権だったわけだ。
デフレについては、三橋貴明氏のブログにご登場願おう。
ソースが内閣府の国民経済計算なので、三橋氏がグラフを作り間違えていない限りは、ほぼ信用できるとしていいだろう。この中の緑色のグラフが「GDPデフレーター」、つまり、GDPを基準としてみた物価水準の推移である。
これを見ても、橋本政権が消費税を上げる直前までは緑色は「ゼロ」を上回ったし、2000年以降も、2003年を底に、リーマンショックの2007年まで、デフレーターは上昇基調であったことがわかる。三橋氏は小泉竹中ラインを猛烈に嫌っているので、この事実は認めたくないだろうが、物価が上昇「基調」に転じていたのは、そんな三橋氏が作ったこのグラフから見ても明らかである。
一方、民主党が政権を取った2009年からはどうか。どう見ても「なべ底」としか言いようがない推移しかしていない。これが、
「自公政権」
と
「民主党政権」
の、火を見るより明らかな違いであると私は思うのだが、残念ながら、こういう指摘をして下さっている方はほとんどいらっしゃらないようだ。なぜ?(笑)
「極東ブログ」の筆者がどんな人なのかについて特に関心もないが、おそらく、この筆者が、こういう「現実」も見えないまま、
「増税翼賛会」
などという言葉をつくってご満悦なのは、presumption(物事を判断する前の偏見)として、
「自民党は悪」
という「マントラ」に骨髄まで浸っているからなのだろう。そしてそれを信じたがっている人が、嬉々としてお話送りゲームに参加し、その「信者集会」の中だけで、
・「ボクたちだけが『真理』を知っているよね〜」
などと、お互いに傷口ナメナメができるのだろう。あら、これって、
・オウム真理教
や、
・放射脳集団
と全く同じではないか(笑)。
2008年から2009年にかけて、一度デフレーターが上がりかけたのも、ちょうどマスゴミが漢字が読めないなどとフルボッコにした麻生政権の時代である。あれだけ衆愚(笑)が、
「本当に困っている人にあげて!」
などと言いながら、フタを開けてみたら96.6%もの世帯がちゃっかり請求した「定額給付金」を始めとする、麻生内閣の緊急経済対策が、デフレ対策としてしっかり奏功していた証拠がここにもある。
しかし悲しいかな衆愚は、麻生総理が「漢字が読めない」であるとか、「カップラーメンの値段を400円だと言った」であるとかなどの、いかにも「衆愚」が食いつきそうなネタにばかり食いつき、ここでも衆愚のマントラである「自民党叩き」にいそしんだわけだ(笑)。
ふう。論評するのもアホくさくなってきた(苦笑)。
上の「GDPデフレーター」を見て、デフレに本気で取り組もうとしてきた、そしてそのことにより成功してきた政権はどちらなの???
それでも「自民党は悪だ」と思いたいのですか?「信者」諸君よ(笑)。ちなみに、デフレを一向に直そうとしない日銀の白川を総裁にしろと最後まで抵抗したのは「民主党」の方ね。自公政権は、白川は「副総裁」として提案してたんだけどねえ。「総裁」は別の人間を提案したのだが、当時野党だった民主党は頑として聞かなかった。
まあ、「衆愚」だけに、そんなことには全く関心がないのであろう。つくづく笑うしかない。
どんなに遅くても次の総選挙は2014年には来る。その時に今の民主党が政権を維持する確率は、ハッキリ言って0%である。橋下新党やみんなの党が大躍進でもしない限り、次は消去法でまた自公政権になるだろう。その時に、できるだけ政策的にフリーハンドになっておきたいという思惑が、限りなくあらゆる「約束」をしない方向で「3党合意」をしようと自民党と公明党が持って行ったのがこの結果であろう。そして当ブログでここでも書いたように、民主党政権時に消費税増税がやってこないように、とにかく消費税増税を後ろに送ろうとして、「つい」自民党公明党と3党合意を「してしまった」方が民主党なのである。
自民党の谷垣総裁は財務大臣経験者であるから、野田と同じような発想を持っている可能性は十分にあるが、現実的政権担当能力で言えば、参議院で林芳正らを抱えている自民党の方がどう厳しく見ても経済政策をうまく行えるであろうと判断せざるを得ない。その「経済政策」とは、「まずはデフレ脱却」である。
あ、「衆愚」は、林芳正も知らないか。しょうがないね、「衆愚」だもの(笑)。